作品へのこだわり

 フィールドテストは相当行います。
 とにかく魚を掛けて見るまで竿の良し悪しは解りません。
 キャスティングがしやすく、とても良い竿だと思っていた物が、魚を掛けてみるとつまらない竿と言うことがあります。
 魚を掛けた時、手元に伝わってくる感触はバンブーロッドの特色だと思うので、その辺にはこだわって行きたいと思っています。

※補足1
 私の作るロッドはかなりの部分で地元の川である閉伊川の影響を受けていると思います。
 ロッドを作っていて何か疑問点が湧いたりすれば直ぐに閉伊川に行ってロッドを振ってみます。
 そして帰ってきて又、工房にこもって作業、ひたすらこの繰り返しです。
 ロッドを作る上で実際に川に立って自分の体で感じる物、これはとても、とても大事な物です。

※補足2
 優しい豊かな気持ちになれる竿、穏やかな気持ちで一日の釣りを終えられる竿、そういう竿を作りたいと思っています。
 人生でたった一度しかないその大切な一日を豊かな優しい気持ちにしてくれる竿、
 竿師としての目標です。たどり着けるかどうかは解りません、

※最後に
 私は竹竿師と言うのは裏方だと思っています。
 釣りキチ三平と言う漫画がありますが、
 その漫画に例えるならば、竹竿師の立ち位置は一平爺さんです。
 間違っても三平君ではないはずです。
 バンブーロッドビルダーが三平君をするのは時間と言う物理学的な問題で絶対に不可能です。
 竹竿を1本作るのに要する時間、そしてその竿に付けられる値段、材料費、ショップの取り分、etc、
 竿作りで生計を立てようと思へば、可能な限りの時間とお金を竿作りに回します。
 生活費を稼ぎだすために、一本でも多くの竿を作ることを考えます。
 三平君をやっている場合では無いのです。
 しかも、私がたまに釣りに行くとすれば、それは商品の開発のための釣りです。
 精神の解放のために釣りに行っているのではないのです。
 純粋な自分の精神の解放の為の釣りは1年に10日あるかないかです。
 それでも、竿作りを続けられるのは、私の作った竿を購入してくれたお客様が、その竿で良い釣りが出来ればと思うからで、
 お客さんが良かった良い釣りが出来たと言ってもらえた時の喜び、ただそれだけの為です。
 工業製品ではない手作りの物を作るという事は、竹竿であれ、桐の箪笥であれ、南部鉄器であれ、そういうものだと思います。
 物作りと言うのは一生掛かって創意工夫、向上していくもの、引退するまで終わりはありません、

フィールドに持ち出す道具であるために
 ブランクの端材に特殊な塗料を染み込ませて、軒下に吊り下げて風雨にさらしている所。
 塗料の耐久テストをしています。
 接着の終わったブランクをウレタン塗装などの防水処理をせずに、庭に放置している所。
 ブランクを接着している接着剤の耐候テストをしています。
 相当に使い込んだ704C3、
 カーボンロッドでも、なかなかここまで使い込む事は無いと思います。
 もちろん、Omura Rod 704C3 はここまで使い込んでも、ノートラブルです。
 上のロッドのグリップのアップです。
 コルクの様子から、どのくらい使用したかが解ります。
 上のロッドのリールシートのキャップ。
 山女用に作った723A6 3番のロッドで50センチ近いレインボーを釣ってみました。


 723A6のカーボンフェルールの強度テストの写真です。
25グラム 50グラム 100グラム
200グラム 500グラム 1000グラム
 1000グラム以上は計測が不可能なので、柱に固定してラインを通して引っ張って見ました。
 結果は、グリップの上から折れ、フェルールはなんともありませんでした。 
 この後、フェルールの上と下を手で持ってフェルールを壊すつもりで、思いっきり曲げてみました。
 結果は、フェルールから20センチくらいの所の竹が折れフェルールは壊れませんでした。




カーボンフェルールの4PCロッド
オオムラロッドの大きな特徴の一つであります。

このカーボンフェルールのお話を少しだけさせていただきます。



1999年まで私はセーリング競技の世界に居ました。
競技活動をやめて今度は何をやろうか?と思い、
思いついたのが学生の時から一度やってみたいと思っていたロッドビルディングでした。
そこで1999年の冬につるや釣具店の平田ロッドメイキングスクールに参加をしました。

ロッドスクールで皆さんが最初に作るのが
セブンフォーと言う竿です。
7フィート4番3PCの竿でした。

このロッドが完成したのが2000年の春で
早速 川に持って行って釣りに使いました。

使ってみると3PCなので上の位置についているフェルールの重量が
結構アクションに影響しているのです。
すぐに、これ、どうにかならないかな?って思うようになりました。


そこで、量販の釣具屋さんに行って籠の中にごちゃごちゃと入って売っている格安渓流竿を買ってきて
この渓流竿を加工してフェルールを作ってみました。
そして、同じテーパーの竿を2本作り、
片方には金属のフェルール、もう一方には渓流竿を加工したフェルールをつけてみました。

この竿を実際の釣り場に持ち出して比較すると
明らかに違いがありました。
フェルールが違うだけで大きな違いが出ました。

これだ!これをやるんだ!
って思いました。


その当時、盛岡市のイーハトーブ釣具店に高橋啓司さんがスタッフとして働いていまして、
私はこの2本の竿を持ってイーハトーブ釣具店に押しかけていきました。
これをやりたいんです。って?
その後、啓司さんにカムパネラさんを紹介してもらい
またまたこの2本のロッドを持ってカムパネラさんを訪ねていき
これをやりたいんです。って、

今に思うと無茶苦茶な話しです。
ただただこれをやりたいという思いだけです。

私はそれまではセーリング競技の世界に居ました。
岩手のフライの世界には存在していませんでした。

啓司さんともカムパネラさんのスタッフとも一度も会った事もないし
話をしたことなどもありませんでした。

啓司さんにしろカムパネラさんのスタッフにしろ、
突然おかしなやつが表れて押しかけて来たぞ!
って感じだったと思います。


カムパネラさんに行った時には
カーボンのフェルールにすると
ライトラインのロッドのアクションが良くなるし
4PCのロッドなども可能になる!
という話をしました。

どうにかこちらの思いが通じて
フェルールの材料となるカーボンのパイプを作ってもらう事になりました。



その後は試作のロッドを作るためにカーボンパイプを作ってもらうのですが
どの芯金にプリグレをどのくらい巻くのか?
パイプの肉厚は?
などなど何もわからないところからのスタートです。

試作のパイプを作ってもらうのですが、
それだって料金が発生します。タダではないです。
作っては試し、作っては試し、の連続です。
かなりの時間とお金を投資しました。

フェルールの図面を書いてカムパネラさんに持って行き
こういう構造の物を作りたいので
ここの肉厚をこうしたい、とかという話をしたりもしました。

そしてこれなら商品として出せるな、と思える竿が出来て、
最初に発売を開始したのは
723A6というモデルでした。
7’2”#3 2PC
の竿です。
このロッドはテーパーを微調整をして723A7と言うモデルとして今も販売を続けています。


その後に取り組んだのは4PCのロッドでした。

バンブーのカーボンフェルールの4PCのロッド
世の中に存在しませんでした。
私が最初に取り組む人でした。
前例がないので参考にするものが全くありません、

そこで、
試作のパイプを作ってもらうにあたって
遠回りをしたくなかったので
市販の4PCのカーボンロッドを私は買ってきました。
そしてそれをカムパネラさんに持って行き
これと同じくらいの肉厚のパイプならば
4PCでの強度が保てるはずです。と言ってみてもらいました。

そして試作のパイプをいくつか作ってもらい
竿のテーパーを考えて
試作をいくつも作り、
そして
703E1 7’0”#3 4PC
と言うロッドの発売にこぎつけました。

外国の事は私は知りませんが
日本国内ではカーボンフェルールの4PCロッドの発売
オオムラロッドが初めてだったと思います。


今ではオオムラロッドのモデル数も増えました。
シングルハンドの4PCからDHのスペイロッドまで発売しています。
フェルールの材料になるカーボンパイプも
カンパネラさんと話し合いをして改良を繰り返して
今は、このモデルにはこのパイプ
と完全に決まって、安定した商品を出せるようになりました。

フェルールの構造も
年々改良を重ねていて
強度も最初のモデルよりも、どんどんと上がってきています。
今後も改良を続けて行く事になるでしょう、
商品の開発に終わりはありません、


飛び込みで高橋啓司さんを訪ねて行って始まったカーボンフェルールですが、
啓司さんやカムパネラさんのスタッフのおかげでどうにか形になりました。
胡散臭い奴が来たぞ!
って、追い返すこともできたはずです。
こちらの思いを聴いてくれたことに感謝をしています。

皆様のおかげでオオムラロッドは成り立って居ます。
心の底から感謝をしています。

人との巡り合わせとか繋がりって不思議な物です。
感謝です。

(2017年9月1日)
 



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