ニンフの釣り
 
私がまだ20代前半だった頃の話しです。

三陸の小規模な渓流で
そこに行くと大きめの淵の底の方に40センチくらいの岩魚が張り付いていて、
私はそこに暇を見つけてはちょくちょく通っていました。

淵の横に陣取り、半日くらいかけて淵の底にネチネチとニンフを流し込むのです。
そうしていると運のよい日にはその岩魚が釣れることもありました。

今に思うと、その岩魚は、海から遡上してきたアメマスですね、

若き日のとても良い思い出です。

今、その小渓流は壊滅してしまった、
釣り人に釣りきられた、
魚、全く居ません、
 
今回の例のように
渓流には水面のフライには全く興味を示さない魚が居ます。
そして、そういう魚は大きい魚であることが多いです。
私は、沢山の魚を釣るよりも
1尾だけで良いから大きくて見惚れるような美しい魚を釣りたい、
そう思う釣師です。
ですので、多分、他のフライマンよりもニンフの釣りをすることが多いと思います。
 
最近はユーロニンフという釣り方が流行の兆しを見せていますが、
ユーロニンフに限らず、
普通のアウトリガーニンフも、マーカーニンフも、
ニンフの釣りは釣り場の条件と釣り方がマッチすると
凄まじく釣れます。
その破壊力は本当に凄まじいです。

特にユーロニンフは凄まじい破壊力を発揮することが多いです。


釣りの良いところは勝ち負けのないところです。
自分の心の中で完結できるところが良いところです。

ニンフの釣りをする時は、
釣りたい釣りたい!と、釣り欲全開で釣りをするのではなくて、
周りの自然に目を向けたり、野鳥のささやきに耳を傾けたり、
時には、河原でコーヒーを沸かしてみたりして、
のんびりと、穏やかな心で、
フライフィッシングを楽しむと良いと思います。
 
ユーロニンフの釣りは釣り大会から発生した釣りです。
競技の釣りから生まれた釣りです。

競技の釣り、それは勝ち負けのある釣りです。

その中身は1尾でも多く釣る事を追求した釣り
いかに効率よく、人より多く釣るにはどうしたらよいか?
それを追求した釣りです。

それは、私の考えるフライフィッシングの基本の哲学から外れています。
釣果を最優先しない、
それがフライフィッシングだと思っています。


我々が自然渓流に行ってするフライフィッシングは競技スポーツでは無いです。

ですから、我々が渓流でユーロニンフの釣りをする時は
その手法や、その哲学、考え方をそのまま真似して取り入れるのではなく、
楽しみとしての釣り、心のリフレッシュの釣り
となるように、何らかのアレンジが必要だと思います。
特に、そこに潜んでいるものの考え方は
根本の部分から変える必要があると思います。
 
釣りの文化を発信するのは
主に、フライ用具をメインに扱う釣り具メーカーだったり
フライ関係の雑誌だったりします。

世間一般の釣り師は、その一言一言に、
右往左往し振り回されていたりするものです。

ニンフの釣りは一歩間違えると魚の乱獲につながり、
リリースをするにしても数釣りに走り、魚の虐待みたいになってしまいがちです。

釣り具メーカーさんや雑誌などは、
その辺のところを良く考えて情報発信をして頂きたいと思います。

フライフィッシングは、豊かな渓流があり
そこに、美しい渓流魚が沢山泳いでいて
それで初めて成り立ちます。
そして、それで初めてフライフィッシングの商売が成り立つのです。


メーカーや雑誌には、その辺のところを絶対に忘れないようにして頂きたいと思っています。
 
ロングリーダーの釣りの情報を発信する時に、
メーカーや雑誌は間違いを犯した
ミスをしたのですね、
ロングリーダーの情報を発信する時に
それが持っているマイナスの要素も同時発信しなければならなかった
なのに、それをしなかった、

結果として
自然渓流で、魚の虐待のような釣りをする人が大量に現れるようになった、


ロングリーダーの釣り、ユーロニンフの釣り、
また、餌釣りのゼロ釣方の釣りは、
凄まじい破壊力を持っている釣りです。

その扱い方を間違えると、渓流の環境破壊
釣り場の破壊につながります。

メーカーや雑誌にはその辺のところをよくよく考えてから行動してほしいと思っています。

健全な釣り場があって、初めて、フライフィッシングの商売が成り立つのです。
そのことを絶対に忘れないようにして頂きたいです。
 
今、私の故郷、三陸では、
ネイティブの魚が残っているところは殆ど無くなってしまいました。

故郷の川は釣り師に破壊されてしまった。

かろうじて残っているところは風前の灯


オオムラロッドでは数釣りは控えるようにしましょう!
と訴えています。

(キャッチアンドリリースされた魚の何割かは
そのダメージに耐えられずに死んでしまうこともあります。
それに、
キャッチアンドリリースの釣りで数釣りをすると
虐待みたいな釣りになってしまいます。
その辺のところが皆さんに
キャッチアンドリリースが理解されない理由です。)

子供のころから慣れ親しんできた
故郷の川が壊滅してしまう、
その気持ちわかりますか?

都市部の釣り師には解らないだろうな?
都市部の釣り人は釣り情報に一生懸命にアンテナを張っていて
そのときによい釣り場を次から次に渡り歩く
そういう釣りスタイルです。

私にとっての故郷の川が壊滅しても
都市部の人にとっては
全国に無数にある渓流釣り場の一つが駄目になったに過ぎない、
また次の釣り場を探せばいいや!
くらいにしか考えていないと思います。

遠くの都会からやってきて
私が大切に思っている故郷の渓流で
思いっきり羽を伸ばす。
しかも破壊力の大きな釣り方で、

故郷の川が駄目になる、
この気持ち
都市部の釣り師には解らないだろうな?


メーカーの人、雑誌の人、
情報を発信する側の人は都会の釣り人です。

ユーロニンフの釣りについての情報を発信する時は、
私のように故郷の川を大切に思っている人の気持ちも考えて
その上で情報発信をして頂きたい
そう思っています。

ロングリーダの時のようなミスをしないようにして頂きたい
そう思っています。

健全な自然豊かな渓流があり
そこに魅力的な渓流魚が沢山泳いでいて
それで初めてフライフィッシングが成り立つのです。


メーカーや雑誌の人、
その辺のところをよろしくお願いいたします。
 
(2024年3月)
 
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