渓流 その1
 
渓流釣りを取り巻く環境は年々悪化しています。
エサ屋などのお持ち帰り釣り師による乱獲、
地球温暖化によるゲリラ豪雨や台風の大型化

私の住む岩手では
源流部の奥深くの岩魚はかろうじてネイティブの魚が残っているところもありますが、
それ以外の殆どの場所は養殖魚の放流によって釣り場が維持されています。
養殖魚を放流しないと魚が居ないと言う現象が起きています。


そういう時代に我々フライフィッシャーはどうすればよいのか?
と言う事を考える必要があります。


私の個人的な考えは
出来るだけ自然界にインパクトの少ない釣りをする、 です。

【 理想的には出来るだけ釣りをしないですけどね?
フィッシュウォッチングだけをしていれば良いのです。
でも、我々釣り師は釣りをしたい、
釣りとは罪深い趣味です。 



具体的には
キャッチアンドリリースの釣りをするのは当然として、

フックはバーブレスを使用する

リリースする時は魚体に出来るだけ触らない、
手で魚体に触れると人間の体温で魚の皮膚が火傷をします。

リーダーティペットを必要以上に長くして釣りをしない
リーダーティペットを長くするとフックを魚に飲み込まれる率が高くなり
魚に大きなダメージを与える事になります。
リリースした魚の生存率が下がります。


またティペットはほんの少し太めを使う
フックを飲み込まれにくくなりますし
フライが木などに引っかかった時に回収率が上がります。
木などにフライを残すと鳥が本物の虫と間違ってそれを食べてしまいます。

数釣りを控える
只々、沢山の数を釣ると言う楽しみ方をするのではなく
一尾、一尾を丁寧に釣る
たった一尾で良いから小さな魚でも良いから
丁寧に釣って記憶にしっかりととどめる、
雑な数釣りをしない!! 
キャッチアンドリリースした魚の何割かは死亡するのです。

無意味に繊細なタックルを使わない
適切な強さのタックルを使用し
短時間でサッ!とランディングをし
出来るだけ短時間でリリースをする、
繊細なタックルで釣りをすると
魚を取り込むのに長時間のファイトになってしまい
魚に大きなダメージを与える結果になります。
リリース後の魚の生存率が下がります。


その他にも色々と考えられると思います。


今後の未来に向かって出来るだけ長い間、質の高いフライフィッシングを楽しみたいのなら
自分の人生を豊かにしたいのなら
自然界にローインパクトな釣りを心掛ける事です。

自然を労わる気持ちを忘れないようにしましょう!

ほんの小さな小さな事の積み重ねが
積もり積もって
明るい未来を作って行く事に繋がって行くのです。
 
 
渓流FF

年号がまだ昭和だった頃の9月
私は車中泊をしながら三陸の渓流を旅していました。

車は中古で購入した日産マーチ
竿はオービスのファー アンド ファイン
リールはマーキスのシルバー

三陸の渓流の支流に分け入り
釣りをしていたら
そこに流れ込む小さな沢に目がとまりました。
川幅1メートルも無いような小さな沢です。

どうしても気になったので、その沢に入って行きました。
入ってみると水量が増えてなかなかの規模の沢に
すると、すぐに廊下状になり釣り上るのが難しい状況に、

覚悟を決めて川を泳いで川の上流に突進しました。

しばらく行くと目の前に大きな滝が現れそこには大きな淵が、
偏光グラスで遠くからそっと覗いてみると
なんと、そこには、
尺を超える山女がウジャウジャと群れをなして泳いでいるではないですか、
産卵の為に遡上してきた山女が貯まっているのですね!

当然釣りました。
夢中になって釣った。
釣れるのは全て尺ヤマメ、

その頃はまだ若かったので
何の疑問も持たずに釣って釣って釣りまくった。
釣っては放し、釣っては放し、
魚の虐待ですよ、
産卵の為に集まったヤマメの、

多分、今、その状況に出くわしたら、
釣りをしないで黙って魚を眺めているでしょうね、
写真を撮るために一尾くらいは釣るかもしれませんが?

若かったのですね!
釣り欲全開ですよ!


後に、その場所には
大きな砂防ダムが出来てしまい
その沢は消滅してしまいました。

この世から消えて無くなった。

あれは、本当の出来事だったのだろうか?
幻だったのではないだろうか?


渓流フライフィッシングの魅力とは、それは、
儚さ
だと、私は思っています。
 
渓流FF

年号がまだ昭和だった頃の夏
三陸の渓流に釣りに行った時の話しです。

その日は雨が結構強く降っていて
何処に行っても増水
釣り出来そうなところを探して
あちらこちらと徘徊していました。

地図を見てこの山の上に細い流れがあるのを発見
壊れそうな林道に入って
車を山の上の方に走らせました。

林道は所々壊れていて
冷や冷やする思いをしながら
山の上の方にたどり着きました。

地図を見ると横には小さな流れがあるはずです。

竿を持って藪の中に突入、
藪を突き進むと
小さな流れが現れました。

流れは藪に覆われていて竿を振るスペースはありません、

ティペットの先に試験管タワシと言うフライを結んで
フライを下流に向けて流しました。
ラインを2メートルくらい出して
流れをゆっくりと下流に向かって歩いていきます。
フライは下流水中にあります。

すると
ゴゴゴン!
という感触が手元に伝わり
魚がフッキング
取り込むと40センチ近い丸々と太った岩魚です。
(今思うと本物の純粋ネイティブの岩魚です。)

その後もゆっくり釣り下ると
ゴゴン!
という感触とともに岩魚がフッキング

釣れて来るのは全て白斑の綺麗な40センチ前後のアメマス系の岩魚です。

一時間くらい釣りをしたでしょうか?
ふと、周りに気を配ると
獣の匂いがします。

ヤバイな!
逃げよう!

慌てて藪をこいて車に逃げ帰りました。



遥か昔の良い思い出です。



今、そこは林道がアスファルトで舗装されて
小さな沢の岩魚は釣り切られました。
その沢には魚は居ません、
 
渓流FF

渓流のFFには
消えていく自然を追いかけていく
という要素があります。

そして、釣れるトラウトは美しい、

儚くて美しい物を追いかける
それが渓流FFです。

美しく
そして、直ぐに消えて無くなる、
 
渓流FF

年号がまだ昭和だった頃の夏の終わり
北三陸の渓流に釣りに行った時の話しです。

日中は広めの流れで山女の釣りを楽しみました。

夕方、今度は岩魚を釣りたいな、
と思い、
上流に向かって車を走らせていました。

すると、道路が二股に分かれていて
どちらの道にも横には川が流れています。
左の方の道が細かったので
そちらの方が人があまり入っていないだろう
と思い、
左の道に車で入って行きました。

しばらくすると道が未舗装になり
さらに奥に進むと行き止まりになり
そこには真っ赤な鳥居が立っていました。

鳥居の前に車を停めて釣り支度をして
横を流れる川に降りました。

釣りを始めると
15センチから20センチくらいの岩魚が
コンスタントに釣れます。

15分くらい釣り上ったところで
高さ5メートルくらいの滝が現れ
その下は大きな滝壺になっていました。
上流に向かって左側が巻き返しになっていて
大きく渦巻いています。

ここでイブニングをやろうと決めて
左側の渦巻いている横の岸に陣取りました。

夕方、薄暗くなってきたら
カディスが下流から沢山飛んできて
ライズが始まり
釣りの方はエルクヘアカディスで面白いように釣れました。
釣れるのは30から35センチくらいの岩魚
夢中になって釣った、

周りが完全に暗くなり
ふと対岸を見ると
青白く光る眼玉が幾つもあり
こちらを見ています。

急に背筋がゾワゾワっとしてきて、、、、

慌てて車に戻りました。
道具もろくに片づけず
ウエイダーも履いたままで車に乗り込み
逃げるようにその場を立ち去りました。


次の年の夏
もう一度あの滝壺に行ってみたいな、
と思い、
確かこの辺りだったのだけどと
探してみるのですが
どうしてもその場所が見つかりません
あの赤い鳥居も見つける事が出来ません

あれから
その滝壺には行けていません
見つける事が出来なくなった、
 
時代は昭和
まだバブル経済が始まる前
確か岩手県出身の鈴木善幸さんが総理大臣をしていた頃だったと思う

その頃は岩手の川も豊かでした。

三月、渓流釣りが解禁したばかりの頃
私は休みの日に自転車で閉伊川の本流に行ってヒカリ釣りをしたものです。

4.5Mのグラスロッドに山吹の芯を使った浮きをつけたフカセ釣りの仕掛け
エサは板取虫、前の晩に板取の木を剥いて中の虫を取り出し
チリ紙を詰めたエサ箱に入れておいたもの
それらを持って川に行きました。

本流なので私の持っている4.5Mのグラスロッドでは手前側しか釣る事が出来ませんでした。
それでもヒカリの群れにあたると20尾30尾と釣れたものです。

ヒカリは山女と違ってナイフのような尖ったシェイプでした。
手に握ると鱗がハラハラと落ちて
銀色の鱗の下から山女と同じパーマークが出てきました。

その姿は海から上って来る鱒の子供
まさにそんな感じでした。

釣れたヒカリは持ち帰って家族で食べました。

山女に比べると身が柔らかくジューシーで、
今でも記憶に残っている味です。

でも、そういう釣りが成り立つ期間はそう長く続きませんでした。

数年後にはヒカリの群れは見られなくなり
釣りに行ってもボーズばかり

まだ子供だった私はすぐに諦めてしまい
ヒカリの釣りをしなくなりました。

その頃には大人の人達もヒカリの釣りをしなくなっていました。
釣りが成り立たなくなったのでしょう、


今現在でも閉伊川には桜鱒が遡上してきます。
でも、それは、
漁協が大量にヤマメを放流しているからです。

昔のように天然のヒカリが群れていた頃の
ネイティブのサクラ鱒ではありません、

閉伊川の山女は終わった!

岩魚は?
私には解りません
ネイティブの岩魚が生き延びている事を願います。


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