竹竿作り その2
 
竹竿作り(第五段階)
含浸させた樹脂が固まった竹です。
表面に樹脂が残っています。
この表面に出ている樹脂をヤスリで除去します。

竹にテーパー加工を付ける為の治具
プレーニングフォームに
設計した数値をセットします。
5/1000ミリの精度でセットします。

プレーニングフォームには三角の溝が付いており
ネジで両サイドの金属を開いたり閉じたりする事により
三角の溝の深さを変える事が出来ます。

溝の深さは三角のピンのついたデプスゲージと言う道具で計測します。
竹にテーパーをつけます。
仕上げ削り、ファイナルプレーン、と言います。

プレーニングフォームの三角の溝に竹を入れてカンナで削っていきます。

削るのは三角の2面だけです。
表皮の面は削りません、

理由は竹の表皮側に力の強い繊維(パワーファイバー)が集まっているからです。

時間をかけて、丁寧に正確に削ります。
仕上げ削りを終えた竹は
表皮側を表面側にして
節並びの順番通りに束ねて
マスキングテープで固定します。

ここまでが第五段階です。
 
竹竿作り(第六段階)
マスキングテープで止めておいた竹を写真のような状態に開きます。

竹の表皮側が下になっています。
表皮側には接着剤は塗りません、
内側の二面に接着剤を塗ります。
接着剤はこちらを使用します。
オオムラロッドはインプリ使用ですので、
木工用の接着剤だと上手く接着できません、
なので、エポキシ系の接着剤を使用しています。

EP007は、
剥離強度、耐衝撃性、耐熱性、耐水性、
などに優れた接着剤です。
世間では第二世代エポキシと呼ばれています。

スキーやスノーボードの板の接着などに使われているそうです。
接着剤を竹に塗ったら
前にも登場したバインダーという機械で竹を束ねます。

束ねた竹は平らな場所を利用して
捻じれをとり真っ直ぐに伸ばします。
真っ直ぐに伸ばした竹を
温度を管理した小部屋、乾燥ボックスに入れて
接着剤を硬化させます。

ここまでが第六段階です。
 
竹竿作り(第七段階)
写真の一番上が接着剤が硬化した物です。

まず最初に固定の為に巻き付けていた糸を取り除きます。
上から2番目が糸を取り除いたものです。

表面にはみ出た接着剤が付いています。
ヤスリをかけてこの接着剤を除去します。
竹を削らないように丁寧に作業をします。

写真の一番下が接着剤を除去した物です。
完成した竹のシャフトが設計通りに出来ているかを計測します。

設計通りに出来ていないものは廃棄します。
残念ですが世に出すわけにはいきません、

設計通りに出来ている物は次の段階の作業になります。

ここまでが第七段階です。
 
竹竿作り(第八段階)
シャフトの表面に光沢処理を施します。
上側が光沢処理後、
下側が処理前、


オオムラロッドはインプリ仕様ですので、
そのままだと竹の表面が剥き出しのままです。
見た目はオイルフィニッシュの竿に似ています。

そのままでも十分防水性能がありますので
そのままにしておいても良いのですが、
見た目の艶やかさを出すために
表面に光沢処理を施します。

竹竿は釣りの為の道具であると同時に
工芸品としての要素も求められます。
美しさも大切な要素です。

この光沢処理の作業、
とても単純な作業ですが作業日数が相当かかります。
この作業だけで、大体、二週間ほどかかります。

これでシャフトの完成です。

ここまでが第八段階です。
 
竹竿作り(第九段階)
岩手県の手作りカーボンロッドメーカーの
カムパネラさんから材料を供給してもらっている
カーボンパイプを
ヤスリを掛けたり、カットしたり、その他色々をして、
フェルール(竿のジョイント部)のパーツを作ります。
光沢処理を済ませて完成しているシャフトを設計図の通りにカットします。
上の写真がシャフトをカットした断面です。
パワーファイバーがシャフトの表面に集中しているのが解ると思います。
旋盤を使ってシャフトのフェルールの取り付け部の加工をします。
作って置いたフェルールのパーツを竹のシャフトに接着をします。
接着剤は写真のEP007です。
この接着剤を使用する理由は
耐衝撃と剥離強度に優れているからです。


ここまでが第九段階です。
 
竹竿作り(第十段階)
フェルールと竹のシャフトではしなやかさが違います。
フェルールはカーボンなので竹より硬いです。

硬さの違いによりフェルールの境目にストレスが集中します。

ストレスを分散するために
フェルールと竹の境目にFRPを積層して
そのFRPをヤスリでテーパー加工をして
ストレスが分散するように加工をします。

カーボンFRPは金属と違いしなります。
今までのような金属のフェルールで起きていた
フェルールと竹の境目のエポキシ塗装にクラックが入る
という問題は
このFRP加工によって解決されています。
メスのフェルールの口の所はストレスがかかります。
そのままでロッドに仕上げて釣りに使うと
メスの口の所が割れると言うトラブルが多発します。

ですので、補強の為と
見た目の意匠の為と
二つの目的で
金属のリングを作りフェルールに取り付けます。
フェルールに使用しているカーボンパイプは
主に縦方向にカーボンの繊維が入っています。

ですので、横方向には強度があまりありません、

竹のシャフトは湿度によって膨張をしたり収縮したりをします。
そのままだとカーボンパイプが竹の膨張収縮に耐えられず
縦方向に亀裂が入ってしまいます。

そこで、
ケブラーの糸をフェルールに巻き付けて
横方向の強度を確保します。

オスのすり合わせ部分には竹が入っていませんので
すり合わせ部分は補強の必要はありません、
強度を増すために、と言う目的もありますが?
主に見た目を綺麗にすると言う目的で
ケブラーの上にブラックのエポキシを塗ります。

これでフェルール(ジョイント部)の完成です。


ここまでが第十段階です。


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